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「良い作詞」とはどういうことか

良い歌詞を求められる。そういった仕事なのだから当たり前だが、しかし「良い歌詞ではない」というまた至極単純な理由でその歌詞が使われなかったり、そもそもそのアーティストが世に出なかったりする。

「良い作詞」なんて定義できない、と思うかもしれない。しかし誰かがそれを判断している以上、そこには基準がきっとある。「良い作詞をお願いします」といわれて、その無責任さに惑わされないためにも、ここでひとつ自分たちの定義をもっておきたい。

#ロゴススタジオ 6/19の作詞ワークショップのテーマは

「良い作詞」を定義する

ということで、まずは先行して考えをいくつかまとめておきたい。


まずは「良い」があまりにも捉えづらいので、もう少ししぼって

「何にとって良い」のかを考えてみたい。

例えば以下のようなことが考えられるだろう。

1.歌い手にとって良い

2.ファンにとって良い

3.文、詩として良い

4.耳に良い


こういったものは幾つでも作れるが、ざっくりと分類してもこんなようなものが考えられる。

例えば

1は、歌いやすさなどが考えられる。

人には例えば50音(日本語は少なくとも発声においては必ずしも50音と完璧な対応があるわけではないが)声をはりやすい音、張りにくい音がある。例えば高い音で伸ばしているメロディのところに「あー」といれるか「すー」といれるか、考えてみればわかるだろう。こういった部分でまず歌い手によって良い歌詞は分類される。(この場合「あー」のほうが「すー」よりも歌いやすいのは明白だが、しかしだからといって「あー」のほうがいい歌詞であるということは必ずしもいえないことには注意したい。あくまでも歌いやすい、ということにすぎない)

例えば覚えやすさなどもあるかもしれない。過度に難解で複雑な歌詞や、あるいは脈略のない歌詞は、シンガーにとっては再現が難しいかもしれない。これらはシンガーの歌詞の理解度にも関係してくる。日本では、特に90年代以降のポップスシーンにおいて、「歌詞内容とはシンガーの思想、感情などの表象である」(these1)というようなテーゼが暗黙の了解とされている傾向がある。もう少し有り体にいえば「歌詞は歌い手が思っていること」というふうに受取手は同化しやすい。そのことの良し悪しは別の議論であるとして(ワークショップの別の回で扱いたい)、少なくともその前提にたつと「あきらかにシンガーが理解していないようなもの」というのはいい歌詞ではないことになる。また逆説的に、「理解できないような歌詞」にすることで前述のテーゼをそのアーティストはまったく前提にしませんよ、という宣言にもなりうる。

また、無意味な言葉の羅列でもメロディとの相性によって、逆にうたいやすくなるということもある。

2もここに絡んでくるかもしれない。例えばアーティストイメージを著しく損なうようなものは良い作詞とはいえない。しかし、かといってなんのイメージもわかないようなあまりに抽象的すぎるもの、あるいはぼんやりとした内容などはまた良い歌詞とはいえないだろう。ここではアーティストのプロデュースイメージが重要になる。つまり、良い作詞家は良いプロデューサーとなるべきなのだ。

3はどうだろうか。文学的な詩としてのクオリティが高いということである。これは、本質的には音楽とは別の分野にその判断を任せていることになるわけだが作詞された詞もひとつの文、詩である以上はそのような評価を受ける可能性はある。この時に、純粋にそれが文学的にどのようなものになっているのか、ということは意識されても良い。しかし文学的にはありえないものも歌詞としてなら成立しうるものがある。というよりも、実際に世に出ているほとんどの歌詞は文学的には成立しているとはいえないだろう。それらが文学的に一応なりとも成立していると思われる理由はいくつか考えられるが、実は前述のthese1によるところも大きい。つまりそれを「そのアーティスト」を主人公とするもの、例えば私小説的に読むことによって、成立しているなどといったことだ。


4.耳によい、というのはいくつかの意味があるがまずは音楽的な気持ち良さということが考えられるだろう。人には不快な音や、受け入れがたい音などがある。逆に気持ちのいい音、口ずさみたくなる音というのもある。もちろんこれは音楽そのものとしての良さと不可分のものだ。あるいは実際に物理レベルで耳によいということも考えられる。音楽の録音技術、または録音のルールなどの制限によって音量や音圧のバランスはある程度の規定が存在する。また、人間の耳にとっていい音量レベルなどもあるだろう。一般に、特にポップスでは歌詞のあるボーカルのレベルが大きくなる。これはもちろん、それが主役であるからだが、もし歌詞が聞き取りづらいことでこれが大きくなっているとすればそれは音楽的はもったいないし、まさに耳にもよくないかもしれない。


#ロゴススタジオ 作詞ワークショップ

本日6/19 19:00-です。

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ヤマモトショウ

作詞家です。音楽をつくります。#ロゴススタジオ で作詞について書いてます。「食べる毎日、毎日食べる」では一日一軒食べたお店を紹介します。

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