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作詞の教科書(仮) 2.2.2 メロディの理解

2.2.2 メロディの理解

 さて、曲先でメロディがきまった楽曲が渡されたとする。このメロディにあわせて作詞をするのだが、このとき最も重要になるのは当然そのメロディ自体を理解することである。この理解は実際には多層的な構造を持っているように考えられる。
 まず当然音楽的な理解が必要となる。つまりその曲の中から、歌詞がつくべきメロディを譜面的に理解する必要がある。これらの具体的にな技術の身に着け方については3.1で扱うが、ここでは通常行われている工程を確認しよう。
 作曲家がつくった楽曲は通常、楽曲データとして渡される。2.2.1で述べたように、これらは現在においてはある程度アレンジがされたものになっていることが多く、ほとんどはそれ単体で音楽として聞くことができるようなものである。歌詞がつくべきメロディの部分は、ピアノやシンセサイザーで表現されていたり、作曲家自身や別のシンガーなどが実際に歌で入れている場合もある(この場合は「ラララ」などや意味のない言葉で歌われていたり、またはある程度意味のある仮の歌詞で歌われている場合もある。仮歌詞については作詞家にとって大きな問題をはらんだものでもあるので、5.3で個別に扱うことにする)。
 まずはこのように表現されてるメロディを把握する必要がある。作曲家側が、メロディ単独の譜面や、単独の音源データ、またはMIDIデータなどを用意している場合がある。これらはできる限りどれも確認したほうがいい。たとえば、譜面上である音程、音価で表されていたとしても、それだけでメロディが理解できるわけではない。たとえば四分音符は一小節を4分割した長さの音という客観的指標だが、仮にメロディの一部がそのように譜面上で表現されていたとしてもそれはだれにとってもまったく同じように理解できる音の長さというわけではない。そのメロディは人間が歌うわけで、同じように四分音符といっても例えば「次の音」に行く際にどのくらいでその音を切るのか、という点は譜面には再現されていない。もちろん、八分音符の長さできるわけではないことはわかるが、音は厳密には時間軸に対してどこまでも細かく分解できるできるわけで次に発声する音に対してどこまで前の音を伸ばすのか、あるいは繋げるのかということのすべてが譜面で表されるわけではないのだ。これは例えばその音をピアノなどの楽器で弾いて表現した音源データであってもすべてが表現されているわけではない。歌には、楽器には現れない音程感も含まれるし、ブレスや音の強弱は完全には再現できない。一方で、その歌のデータにしてもそれはあくまでも参考であって本来「歌われるべき」歌ではないし、また音程やリズムなど前述のように揺れがあることも事実であるから、それが「想定されたものなのかそうでないのか」を譜面や楽器での演奏と比べることでイメージする必要がある。
 このように、「歌」のメロディであることを意識した上で、シンセメロのデータを理解することで、はじめて作詞のステップに進むことが可能になる。

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