わたしの結婚式

結婚式をする。

と、いうシチュエーションになったとき、果たして自分はどんな結婚式をするだろうか。この歳になると、友人知人の結婚式にもそれなりの数参加し、だいたいの傾向がわかってきた。そこで、以下わたしの結婚式をシミュレーションしてみようと思う。

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司会「みなさま本日は、新郎ヤマモトショウ新婦〇〇の結婚式、披露宴にご列席いただきまことにありがとうございます。それではまずはじめに、ご来賓のみなさまを代表いたしまして、新郎の勤め先であるアプリオリ・ミュージック合同会社、代表の山本奨さまよりご祝辞をいただきます。山本さま、よろしくお願いいたします」

山本「ただいまご紹介にあずかりましたアプリオリ・ミュージック合同会社、代表CEOの山本奨と申します。本日は、ショウ君、そして〇〇さん、ご結婚おめでとうございます。そしてご両家のみなさま、まことにおめでとうございます。甚だ僭越ではございますが、わたくしよりお祝いの言葉を述べさせていただきます。
 ショウ君とは、彼が産まれたときからの仲でしてかれこれ30年の関係になります。どういうわけか産まれた場所、時間、そして名前も同じでして、それ以来こうして長い時を一緒に過ごして参りました。まさか、こんなにはやく彼が結婚することになろうとは、と驚いているとともに人ごとではいられないな、という気持ちでいっぱいです。
 このような挨拶では、大半の場合、はやくおわってほしいという眼差しを向ける側として、席に座っているわけですが、いざこうしてそのスピーチをする側にたってみると、意外と話したいことがたくさんあるといいますか、長くなってしまうことも非常によく理解できるといった次第でございます。そこで今日は、話をひとつにしぼりまして、結婚にまつわる言葉をひとつ新郎新婦に送りたいと思います。
 「結婚」という漢字を見てみますと、結婚の婚には「女」という字が入っております。「女」という字は、一般的には「女性」という意味かと思います。つまり、結婚には「女性」が含まれているということになります。男性に関しては、いるのかいないのか字からはわかりませんので、割愛させてください。また結婚という字には、「糸」や「口」なども含まれているようです。どおりで本日この会場にはたくさんの口が並んでおります。また、みなさまのお召し物にはたくさんの糸がつかわれていることと思います。
 このように結婚というのは、1人だけのものではなく、多くのものが関わってなされることです。
 新郎新婦のお二人も、糸や口への感謝の気持ちを忘れることなく、これからも仲良く過ごしていってほしいと思います。
 本日はまことにおめでとうございます。」

司会「山本さま、ありがとうございます。それでは続きまして、乾杯のご挨拶を、新郎の勤務先でありますアプリオリ・ミュージック合同会社の最高経理責任者CFOの山本奨さまよりいただきたく思います。山本さま、よろしくお願いいたします」

山本「ショウさん、〇〇さん、ご結婚まことにおめでとうございます。乾杯の前に一言、ご挨拶、ご祝辞を述べさせてください。
 先ほど、代表から結婚に関するお言葉がありましたので、わたくしからはショウさんの職場での様子をお話しさせてください。
 私と彼とは、入社以前、そして会社立ち上げ以前からのもう30年近い顔馴染みなのですが、会社立ち上げの時も彼は、経営も経理もまかせろといわんばかりの勢いでありました。今でも、会社の全売上のうちなんと100%を稼ぎ出しております。これは全社員の中でもトップクラスの実績で、期待のホープと言えるでしょう。全社員1名という中で、社内に彼の名前を知らない人はほとんどいないといってもいいと思います。
私共の会社は、みなさまには必ずしも馴染みがないかもしれませんが、主に音楽関連の制作やアーティストのマネージメント、そしてスタジオの運営などを行なっております。ショウさんは、その全ての分野においてご活躍なさっておられます。このように言いますと、他の社員はいったい何をしているんだという風におもわれるかもしれませんが、全員が自分の役職にとらわれることなく、自由に動く社風であります。ひとつ、印象的なエピソードがあるので、ご紹介させてください。あれは、まだ会社立ち上げ一年目の期末時期のことでした。わたしもはじめての決算となり、経理責任者としては緊張が続き時期でありました。やはり人手もたりず、困っていたところショウさんが音楽制作の業務をはやくきりあげて、慣れない経理の仕事に協力してくれました。おかげで、計算はスムーズに進み、余裕をもって決算に進むことができました。彼から伝えられていた決算の時期が一ヶ月間違っていたというのはささいな問題かと思います。
 そんな彼とは、これからもきっても切れない関係であることは、この30年あまりでひしひしと感じております。この関係がきれるようなことがあるときは、会社の終わりと思っておりますし、そうでなくてもかなり危ない状況かと思いますので、これからは〇〇さんとのご協力のもと、さらに社を発展させるべく尽力できればと思っております。
 それでは僭越ではございますが、乾杯の音頭をとらせていただきます。本日はまことにおめでとうございます。乾杯!」

「乾杯!」

司会「山本さま、素敵なご挨拶ありがとうございました。みなさま、新郎との大変親密なご関係がわかるお言葉ばかりで、大変素敵なご挨拶、乾杯となりました。それではしばし、ご歓談をお楽しみください。また、本日のお料理は、新郎の地元静岡にちなみまして、お茶づくしです。お茶の葉サラダ、茶葉の白和え、ヴィシソワーズの抹茶ソース、お茶風味のローストビーフ、そしてお茶漬けとなっております」

〜歓談〜

司会「それではここで、お色直しのためいったん退場となります。お色直しの間、みなさまには新郎新婦の手によるムービーをご覧いただく予定だったのですが、新郎のパソコンが故障したとのことで、本日は新郎が出演しておりますミュージックビデオを何本かご覧いただきます。それでは会場スクリーンをYoutubeにつなぎますので、しばらくお待ちください」

司会「こちらは新郎が在籍しておりましたバンドふぇのたすの「今夜がおわらない」という楽曲のミュージックビデオです。一本別のビデオをつくったのですが、内容があわなかったためとり直したこと、また途中のダンスで新郎がまったくダンスを踊れず、途中からヤギに変えられてしまったことが思い出とおっしゃっていました。」


司会「こちらは新郎が作詞作曲をしただけなのに、なぜかミュージックビデオの主演もすることになったというタルトタタンの「突撃三文ミステリー」のミュージックビデオです。こちらの出演ギャラは崎陽軒のシュウマイ弁当ひとつだったとのことです」


司会「さて、準備がととのったようです。新郎新婦の再入場です!予算の関係上、二種類目のお召し物が用意できなかったため、ここで会場の照明の色をかえさせていただき、これをもってお色直しとさせていただきます」

司会「それではここで、ご友人のみなさまより、サプライズで余興を行いたい、ということです。え?申し訳ございません、ただいま入りました情報で、こちら新婦が余興アレレルギーとのことでキャンセルとさせていただきます。みなさま、席にお戻りください。」


司会「それでは最後に、新郎ヤマモトショウより、みなさまにご挨拶がございます。それではよろしくお願いします」


山本「はい。みなさま、本日は足元に重力があるなか、私どもの結婚式、披露宴におこしいただきありがとうございました。本日いらしていただいたみなさまのお顔をここから見させていただきまして、どの方ともたくさんの思い出があることが思い出されます。思い出が思い出されるというのは、まるで頭痛が痛いというような表現ですが、みなさまとの関係はそのように一言ではいえないものなのです。そのようなみなさまにご出席いただき、このような素晴らしい宴になったことを喜ばしく思っております。本日の披露宴はチケットをイープラス、チケットぴあ、ローソンチケットなどで販売したところ、めでたくソールドアウトとなりました。2で割りきれない額がよいとのことで、30000円に設定したのですが、手数料で30600円になってしまったようです。申し訳御座いません。そもそも30000円も2で割り切れると思うのですが、そのあたり柔軟になれるのに、なぜご祝儀というシステムがなくならないのかは大変不思議なことです。また当日券でご参加いただいた方もありがとうございます。ドリンクチケットをまだ使用していない方は、帰りにドリンクカウンターにて交換できますので、ぜひ記念のお茶をもらってかえってください。本日はまことにありがとうございました」

司会「ありがとうございました。本日の司会は、アプリオリ・ミュージック合同会社、総務係長の山本奨でした。」




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