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25歳のママシンガーはどうやってCDデビューしたのか

2019/7/17「かなまる」という25歳のシンガーのはじめての全国流通盤「まるいち」がリリースされた。彼女は3歳になる娘を育てながら活動するママシンガー、その活動スタイルも注目されている。

と、まあそれらしく書き始めればただほんの少しものめずらしいアーティストのデビュープロフィールかもしれない。しかし実際にはママで、そしてそこからスタートしてCDデビューするというのはそんなに簡単でも単純でもないことのように思う。ここでは少し、彼女がどうやってこのCDリリースまでたどり着いたのかを筆者ヤマモトショウの視点から振り返ってみたい。

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僕は基本的にTwitterのDMを開放(誰でもDMを送れる設定に)している。ここにはバンドをやっている頃からも含めてファンの方からの色々なメッセージなどともに、ミュージシャンや音楽や芸能の活動をする方からの相談がくる。基本的には全部目を通して、それらにはほとんどできるだけ返事をしているのだけど、意外と相談をしてきておいてそれに返信したにもかからず特にその後連絡をしてこない人も多い。2018年7月、ちょうど今から1年ほど前かなまるは最初軽い挨拶程度のDMをくれたのだがそれに「何かあれば相談のります」と返したら、かなまるは最初から結構な分量の内容を返信してきた。

彼女のことをもちろん詳しくは知らなかったので、調べてみたりのちに本人から聞いた話をまとめると、10代の頃は地下アイドルをやっていて、その後(3年ほど前)に妊娠、出産。シングルマザーで子供を育てながら、それでも音楽や芸能の活動をしたい、という夢をもってミスiD2018に応募。そこではSKY-HIさんの個人賞を受賞したという。ミスiDというオーディションは僕も知り合いがたくさん関わっていたり、受賞した方とその後仕事をしたりと色々な縁があるけれど、ざっくりいってしまえば実に不思議なオーディションだ。普通オーディションは事務所などが人材発掘のためにやるものであって、その目的がはっきりしているがミスiDの最大にして最高の(別の観点からみたら最低の)特徴は「受賞してもなにもおきない」ということだ。例えばなにかマネージメント事務所に所属することになる、ということもない。(もちろん、これがきっかけで決まる人はいる)。昨今の事情をみれば、マネジメントに所属することが、芸能活動における唯一の正解ではないことが明らかになっている世の中で、当然こういったオーディションスタイルはある種の素晴らしい結果を生む可能性も持っていると思う。かなまるは、幸いその賞をいただいたわけだが、もちろん例に漏れず、だから何があるというわけではなかった。それをきっかけに彼女のことを知ってくれる人が飛躍的に増えたのはたしかだが、何か芸能活動や音楽活動の座組みが保証されたわけではない。(もちろん、事務所やレコード会社もない)

ということで、今後どうしたらいいでしょうか?という相談になったわけだ。(もちろんそんな適当な文章がきたわけではない)

ミスiDのことは知っていたし、なんとなく状況も理解はできていたつもりだったので、まずは状況と彼女のやりたいことを整理してみることにした。

最初に基本的なこととしては

・音楽、芸能の夢を諦めたくはない

・ママとして娘に頑張っているところを見せたい

・ママとしての仕事も絶対に妥協したくない

という点を確認したと思う。まあこれらは、言うだけならば簡単なのだけど実際にはそんな生半可なことではないと思った。まず僕自身は子供を育てた経験がないので、その大変さは実感できていない。それがどのような具体的な内容を伴うのかは、想像しながらやっていくしかない。

ただ、僕はそれを面白いかもしれないな、と思った。これは単純にそう思ったというだけのことだ。別にこういう人が成功するとか、それこそCDデビューするとかそういった直感ではない。むしろ、こういうことを頑張れないなんて面白くないなと思った、という感じだろう。


7月末頃、別のレコーディングで出かけた場所にお昼前くらいの時間。かなまる本人にそこにきてもらって、話をした。

音楽プロデューサーとして、曲をつくる、今すぐにCDを出す、とかとかそういったことをできないわけではなかったけれど、それはあまり意味がない。それは慈善事業にすらならない。

まずは一緒にやり方を考えましょうという話をしたと思う。

普通、音楽をやっていく上で重要だと思われている事項の中で彼女にとっては難しいいくつかの事項が浮き彫りになった。

例えば

平日の夜にライブハウスでライブを頻繁にすること

は基本的に難しい。ママとしての仕事の時間と被るからだ。最初に相談に来た時に、どうやったら大きいライブハウスでライブができるのか、という話からはじまったのを覚えているが、そもそもそれは活動の可能なスタンスとあっていない問題意識だったといえる。

現実的に上記3つの軸を基本とした場合、普通に提案できるような音楽活動のスタイルは彼女にはあっていない。しかし、当然世の中を見渡してみればそんなやり方ばかり(それが普通であるといわれる方法であるならそれが当たり前に)広がっている。

そこで、まずは活動の軸を、生活のスタイルと合う形で考えながらつくっていくことを目標とした。

今は基本的には家にいながら、そして時間は関係なく、世の中にむけて音楽活動をする方法がある。Youtube、SNS、ライブ配信。

「どれが一番いいんですか?」と安直な質問もよくされるが、もちろんデータ上のあれこれはあっても、最終的にはやってみなければわからないことは多い。かなまるに関しては、ライブ配信と本人のスタンスとの相性がよかったといえる。

特に「17 live」では、約半年ほどでトップクラスのライバーに並べるような数字を残せるほどになった。そのノウハウについては今ここで僕が書くことではないと思われるので、別の機会に譲りたい。が、シンプルにいえばかなまるは「続けることができた」ということだろうと思う。

ライブ配信で見てくれる人も増え、知名度は少しずつあがっている。

しかしながら、彼女の音楽、芸能活動における「夢」はそれだけではない。ライブも曲も、やりたいことはいくつもあった。

ライブに関しては、まずは形だけのためにやっているバンド編成から、自分のスタイルにあったライブに変更した(ライブ配信ではバンド編成ではないのだから。そしてリハーサルスタジオでリハの時間をたくさんつくるのが難しいから)。そして自身の主催する形式のライブでは、まさにこちらもライブ配信と同じような形で入場無料、投げ銭形式での開催とした。

これらはかなまるの活動スタンス全体に整合性をもたらしたと思う。その結果として、予想以上の人が来てくれるライブとなった。

そして、これまでよりも大きな会場でライブを行うということも自動的にかなっていくことになる。

また楽曲制作も同時にはじめることになった。まず、これらの活動スタンスから導かれるような楽曲群である必要がある。歌詞の内容などについては、当然かなまるの思いや、このようなスタンスを十分に考慮する必要があるといえる。(もちろん、曲作りというのはまったくもってそればかりではないのだけれど)。僕自身も曲はかくが、2018年の秋頃からはかなまるにあった作曲家、作詞家についても色々と考え始め色々な人にあうようになった。上記のような彼女自身の夢や、活動スタンスについて話すことでその活動に共鳴してくれる作家の方も徐々にみつかるようになってきた。


ライブ配信をはじめて約半年、ライブも少しずつやれるようになってきた3月頃、次の夢について考えようという話をかなまるにした。それは音源の発売だ。CDという形に関しては、僕自身も様々思うことはあるが、それがかなまる本人の夢の一つであることはすでに聞いていたため、CDをつくることは前提とした上で、それをどういったものにするのかということを考えようということだったと思う。CDをつくるのにはそれなりにお金がかかるが(曲をつくるのもお金はかかるし、何をするにもお金はかかるのだけど、CDとなると物理的に避けられない制作費がかかる)、それを考えることができるような活動になってきたということでもあったと思う。

そこでCDをつくるにあたって、まずは関わってほしいなと思っている人をかなまると一緒に考え、そして本人にかなまるにあってもらったり話をしたりすることにした。具体的にものであるCDをつくるときに関わってもらう人は、この時点では事務所やレーベルに所属していないかなまるについて「面白い」と思ってもらう以外では、参加してもらうモチベーションはあまりない(まあとんでもない高額ギャラを提示すればやってくれる、という人もいないわけではないと思うが、それが作品のクオリティにつながるとはあまり思っていなかったというだけのことである)。幸い、素晴らしいチームがあつまりアルバム制作はスタートした。僕は全体のプロデュースをし、発売にあたっては新たにpayayaam recordsというレーベルを立ち上げた。

ひとつのアルバムができるには本当に多くの人が関わっていて、そして発売された今もさらに多くの人がそれを世に広めるために動いてくれている。そして、たくさんの人が手にしてくれることでそれがはじめて音楽CDになる。

当然CDというのも商品なので、もっとも単純化して考えれば売る人と買う人がいれば存在することになる。つまり、それを買いたいと思っている人がいて、それを誰かが認識していればリリースすることはできるわけだ。



かなまるとやってきたことはつまり

夢を言葉にする

その夢を具体的にする。そして細分化する。

それの実現に必要なことを続ける。

ということだと思う。


どう考えても、まだまだこの夢は途中なので、

また言葉にして、具体化して、実現するだろうと思う。

それはきっとめちゃくちゃ面白いので、気になる人はぜひ関わってほしいとも思っている。





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