NFTとNFT作品についての諸問題(2021年10月現在)
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NFTとNFT作品についての諸問題(2021年10月現在)

NFTバブル、と言われている。(らしい)
実際にNFTアート(後述するが、これが本当にNFT「アート」といえるのかはまた別の問題でもある)がかなりの高額で取引されており、これまでのアートの世界の文脈とは違った流れで大きなマネーの動き(もちろんそれらは主に仮想通貨)があるのと同時に、様々な情報が錯綜し、ざっくりといえば「儲かりそう」というイメージのみで参入する人が多くなっている状況など、さながらバブルといっても過言ではないのはその通りだろうと思う。

 僕自身は今年のはじめくらいからNFTに興味をもって実際に音楽作品をNFTとして発売したりもした(ある種の人によれば、このデジタルデータはNFTアートではないかもしれない)。それらは日本円で500円から数十万円くらいまでの額で取引されたので、まあそれなりの額であるといえるだろう。僕の仕事は音楽家、音楽プロデューサーとしてがメインなのだが、そもそも音楽作品が単体として何万円という価値がつくことはあまり考えられない。これは絵画などのアートと違って、そもそも音楽作品の最小単位が定義しにくいことにもよるだろう。これ自体も非常に重要な問題なのだが、現時点ではいったんここには細かく言及しないこととしたい。直感的には、音楽家がつくっているものは「CD」や「データ」ではなく「曲」そのものであると思われるが、その「曲」そのものといえるものがどこに存在しているのか、というような論点さえ把握していればいいだろう。
 

 この点において、例えば僕は音楽家として楽曲のアレンジをすると一曲数十万円の報酬をもらっていたり、作詞作曲の印税は楽曲によってかわるが、まったく売れなければ数円、うれれば上限はほとんどない、といった世界である。しかし、曲をデータとして販売しているCDやダウンロード、ストリーミングであれば一曲単位の値段はせいぜい数百円である。(プレミアがつくようなレコードで一曲数万円ということはありえるが、これは別につくっている人間に入る利益とは一切関係がない)。実際にNFTとして、販売したデータは「NFT」というラベルづけがされていること以外は実際にはほとんどこのような売っているデータと同じものである(wavとかmp3とか、CDやダウンロードでほとんどの人が聞いているデータと同じものである)ので、ある意味でそれを一つだけうって数十万円というのも、これはかなり「バブル」なのではないか、というのもそれなりに納得のいく話だ。(なぜデータとしては同じなのにそのような価格がつくか、ということは後述する)

 ところで、まずそもそもNFTとは何かというのをまとめておこう。NFTとはnon-fungible tokenの略称であり、日本語では非代替性トークンと言われる。これらはブロックチェーン上に記録、保存されたデータであり、非常に「ざっくりとした」説明をすれば「唯一性が保証されたデジタルデータ」である。何がざっくりしているかといえば、このあたりがまさにNFTに関しての誤解や勘違いの温床になっているのだが、よくNFTは

「コピーできない」
「この世に一つしかない」

デジタルデータであるというように言われる(だからこそコピーされては価値がなくなっていくアート作品と相性がいいのだ、と)。ところがこれは端的に嘘である。そもそも発売されているNFTはすべてオリジナルのアート作品のコピーである。もう少し具体的に、僕自身の例で書いてみよう。

僕が今から「仮想通貨LOVE」という曲をつくったとする(そんなことは思ってないので、実際には作らなそうな曲名にしてみた)。先ほども書いたように、曲をつくるというのはかなり微妙な表現なのだが、今回は僕が作詞作曲して、アレンジもして歌や楽器も録音してミックスも終えた「KasoTukaLove.wav 」というファイルをつくりあげたということにしよう。(wavというのは音声データの形式のひとつだ)
当然、この楽曲の著作権は僕にある。音楽業界的に言えば「原盤権」も僕にあるので、これをCDやデータとして販売する際の権利は基本的にすべて僕にあるといえる。

さて、この「仮想通貨LOVE」のデータをNFTとしてリリースしようとしたとする。このとき、どういったNFTマーケット(NFTを販売する場所)を選ぶか、またその中でどのようなチェーンを選ぶか(ブロックチェーンには様々な種類があり、マーケットごとに扱っているブロックチェーンも様々異なる)といったこともあるが、これは今はとりあえず置いておこう。今一番ユーザーがおおいマーケットはおそらく「OpenSea」というところなので、そこでイーサリアムブロックチェーンでNFT化するとしよう。

 この操作自体は特に難しいことはない。アカウントをつくって、あとはデータをインターネットにアップロードするのとほとんど同じ要領だ。
すると、「KasoTukaLove.wav」のNFTがブロックチェーン上にコピーされる。元のデータはもちろん僕のパソコン(最近の音楽は基本的にパソコンでつくられる)に残ったままだ。この時点で「この世にひとつしかない」とか「コピーできない」というのは嘘だというのはわかるだろう。
 通常のデジタルデータのダウンロードやストリーミングと違うところは、この「仮想通貨LOVE」のNFTデータの売り買いなどのやりとり、つまりブロックチェーン上での動きはすべてそのブロックチェーン上に保存されるということである。具体的にはそれによって、例えばこの曲が転売された際にその額の一部が元のクリエイターである僕に還元されたり、また不正利用を防ぐことに役立つといったようなメリットが存在する。
(そもそもだが、そのNFTを買って、それをボイスメモで録音するとか、アートならスクショするとか、そういった方法でコピーすることももちろん可能だ、そのような行為はブロックチェーン上にももちろん保存されない)

 このような意味で、「唯一性が保証されたデジタルデータ」であるNFT楽曲は、狭い意味ではそれを購入して所有している人のみが聞くことができる楽曲となっているといえるだろう。(実際にはあまりそういうことにはならないが)

 さて、このように書いてくると、実際にNFT、あるいはこのバブルをある種の問題として扱う上でポイントになってくる点が見えてくるだろうと思う。NFTに関しては重要になるのは

・ブロックチェーン

・(仮想通貨)

・NFTとNFTでないものの違い

・NFT「アート」

などであろう。

 まずNFTを扱う以上はブロックチェーンは絶対的なポイントになっているといえる。よくNFTに関する記事で、それらの運用を進めたり、新しいマーケットプレイスを紹介していたりするものの中でそれらが「どんなブロックチェーン上のNFTなのか」についてまったく言及されていないものがある。そういった紹介は成り立ちからいって信用度が低いと言えるだろう。
 

 ブロックチェーンの技術的な内容については、僕自身の理解も及ばない上に、ここで説明できるような内容ではないのだが、上記のNFTの仕組みが成り立つことからもわかるように基本的にはやりとりが保存されるデータベースであり、これらのほとんどはビットコインやイーサリアムといった仮想通貨の存在と不可分となっている。それらが通貨としての信頼性をもつために、ブロックチェーンの仕組みは整備されており、例えばビットコインなどはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)という仕組みによって、それらの信頼を形成している。具体的な中身については専門的な記事で多く説明されてるので、そちらを参照してほしいが、これらは基本的にブロックチェーン上での報酬によって、非中央集権的に検証、管理、運営がなされている。法定通貨であれば基本的にそれを保証してくれるのは国、そして中央銀行(日本なら日本国と日本銀行)だ。しかし仮想通貨は、それを基本的には必要としていない。参加している各人が、その仮想通貨自体を報酬として、それらの検証を行っていることによって、その信頼性が保証されていることになる。
 
 ところで最近「NFTをはじめとするこのようなブロックチェーン上のシステムには国家レベルの電力が使われており、これらが環境問題に直結する」というような批判が行われている。これらはある意味ではクリティカルな問題だといえるだろう。上記のようなシステムでブロックチェーンが運営されている以上は、それらは避けて通れない問題になっている。

 しかしこのような問題設定ではいくつかの論点がスルーされているともいえるだろう。

 それは
・法定通貨の運用ではどのくらいの電力消費があるのか
といった、比較対象の問題もあるが、僕が個人的に問題視しているのはむしろ、

・そもそもNFTはこういった成り立ち、つまりPoWで動くブロックチェーン上で動かさなければいけないようなものなのか

という点である。

 今たとえばOpenSeaでNFT作品を普通に販売すると(イーサリアムブロックチェーンで、ということにとりあえず限定しても)、前述したような大きな電力が消費されてるのは確かだろう。しかしこれはNFTのアートとしての価値、たとえば音楽であれば楽曲のクオリティとか、あるいはその権利の保全、にそれが費やされているわけではない。そうではなくて、単にブロックチェーンが非中央集権的に運用されるためにそれは使われている。実際NFTをイーサリアムで売買してみるとわかるが、いわゆるガス代といわれるような仮想通貨やNFTなどのブロックチェーン上での取引にかかる手数料のようなものはかなり大きい数値になっている。(先日数万円のNFTを買おうと思ったら、手数料が10万円みたいなことが現実にあった)。

 もう一度書くが、これが本質的な手数料(あるいは電力使用)であるならばそれはそれで一定の価値があるだろう。実際、仮想通貨そのものはこのような仕組みがゆえに法定通貨ではないにもかかわらず通貨として機能する、という「価値」を持っている。もちろん、仮想通貨が通貨として本当に有意義なものなのかは現時点で結論が出せるようなことではないし、実際にビットコインを国の通貨として使う国が出てきている一方で、あんなに価格が乱高下するものを通貨として使わなければいけないのが我が身だったらと思うと大分しんどいだろうとも思う。しかしそれがそもそもの理念として存在してるのだから、それ自体はそのように受け止めるしかない部分もあり、それは選択の問題であるといえるだろう。
 しかしNFT、特に「NFTアート」に関して言えば、それがアートであるという点において、このようなPoWで運用されるブロックチェーンで「なければいけない」理由がどこにあるのか、という点はまだ十分に議論されていないように思われる。それが環境問題に繋がっているのならなおさらだ。(さて、こういうところに突っ込まれると論点がずれるので一応書いておくが、アートとしての価値の保全のためになら電力が使われるのはいいのか、というのはもちろん別の課題としては存在する。しかしそれは今は扱う余裕がない)。


 もちろん今、PoWのようなシステムではないブロックチェーンも存在する。これらがブロックチェーンといえるのか、というような問題はあるが、少なくとも上記のような電力消費の問題、手数料(ガス代)の問題はほとんど発生しないような運用は可能である。
 僕自身も、上記の実際に販売したNFTはこのようなブロックチェーンで販売したものである。(ガス代はもちろんないし、電気使用については正確なところはわからないが、少なくともPoWで運用されていない)
https://www.japan-contents-blockchain-initiative.org/
 企業間でブロックチェーンが運営されているため、管理主体が存在するという意味ではこれを本来と意味で「NFTではない」と考えることもできるが、そもそも「唯一性が保証されたデジタルデータである」という特徴そのものはもちろん保持されている。高額がついたものは僕が制作過程でうまれる「デモ音源」をNFTとして販売したものなどである。これらは、僕は一般に「作品として」公開するようなものではないと思っているが、一方で別に聞かれて困るものでもないし、聞きたいという人がいるならとも思っていたもので、特にアイドルにおいてはある種のプロセスエコノミーとして機能するとも思っているし、原盤の価値を拡張できる可能性も感じている。もちろんそのあたりの取り扱いに関しては今後色々と議論していくべきだろう。


 現状これらはOpenSeaのようなわかりやすくオープンなマーケットプレイスを持っていないので、そのような取引という点では見劣りする部分はあるという点は併記しておきたい。(とはいえ、今それらを販売しているLIVE TV SHOWというサービス中での売買そのものは発生しており、それらの転売益がきちんとクリエイターに還元されているのも、僕自身がクリエイターとして確認している。)


ということで、現時点でNFTに関しての僕の問題意識をまとめておこうと思う。

・NFT(あるいはブロックチェーン)に関する正しい知識が出回っているとはいえない。そしてそれは当然(特に仮想通貨などは投資対象としてももはやメジャーなので)トラブルの原因になりうる。
・環境問題や電力消費、またガス代の問題はNFTの少なくともアートとしての側面からトレードオフとはいえないように思われる。よってそれが解決されていない以上は手を出すべきではないのではないか。
・本当にクリエイターやコンテンツをもっている人にとって価値のあるNFTの運用の仕方はまだまだ議論されるべきである。



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作詞家です。作曲、アレンジなども結構します。音楽プロデューサでもあります。#ロゴススタジオ で作詞について書いてます。「#音楽ミステリー小説」も書きはじめました。よろしくお願いします。 ご連絡は info.apriorimusic@gmail.com にお願いします。