印税未払い問題と印税システムに関して

かねてより、Twitterなどで発言していた未払い問題についてまとめておきます。音楽業界の印税システムなどの、やや複雑な話がありますので基本的には興味ある方と、逆に印税のシステムについて知りたいと思ってる方などが読むのが良いかとは思います。

まず、事の発端としてはフィロソフィーのダンスというグループの発売されている音源からの印税の支払いが明確におかしい、ということに一年と少し前に気づいたことでした。

実際に、リリースしたほとんどの作品で未払いが発生していました

(変な邪推をされたくないので一応明記しておきますが、この件と僕がフィロソフィーのダンスの制作から離れた件は直接は関係ありません)

ここで一度印税のシステムそのものを確認します。(これを把握しておかないと今回の何がおかしいのかわからないので)


僕ら作詞家作曲家は、各楽曲に関して音楽出版社(以下出版社)と言われるところと契約します。これは楽曲単位です。そして、僕らは直接的にはこの出版社から最終的に印税の支払いを受けます。

出版社は楽曲の著作権を作家の代理でもっている、と考えてください。また出版社は、JASRACなどの著作権管理団体(JASRAC以外にもありますが、今回はJASRACしか登場しないので以下JASRACで)とやりとりをし、JASRACは印税相当分を出版社に支払います。

次に音源自体は当然レコード会社から発売されます。配信などもありますし、色々とありますが、「販売している会社」(以下販売元)が売れた枚数、数に応じてその印税相当分(これは割合が決まっています)をJASRACに支払います。(正確には販売元からの申請数に対して、JASRACからこれこれの額を支払ってください、という連絡がきます)

そこから、手数料などが引かれて、出版社に支払われ、我々作家に最終的に支払われるわけです。
(出版社、というのが必ず必要なわけではないのですが、僕の場合はほとんど関わっています)

なので、支払いの流れとしては

販売元→JASRAC→出版社→作詞作曲家

となります。

支払いに何かおかしいことがおこっているということは、この矢印のどこかで問題が起こっているわけです。

さて、そもそもなぜ支払額がおかしいと気づいたかといえば、フィロソフィーのダンスにはその時点で全曲に関わっているのと同時にほとんど運営として状況を把握していたこともあり、CDの売り上げをわかっていたことがあります(まあでもこれは、調べようと思えばオリコンなどに出ているので、誰でもある程度把握することは可能です)、印税の率は決まっているので、支払われる額のイメージが「桁単位」でズレることはほぼありえません。

これは例ですが、だいたいこんな感じです。
一枚3000円のCDに対して、著作権使用料(つまり販売元がJASRACに払うもの)は6%の180円です(正確には出荷控除などがあります)。このうちJASRACの手数料はありますが、概ね25%が作曲家に入ると考えられるので、45円ですね。ちょっとややこしいので少なめにみつもって40円としておきます。本当は控除などでさらに少なくなるかもしれません。
これが3万枚うれてたら、3万×40で120万円がCDから作曲家がえる印税になります。まあ契約にも色々あるので、たとえば3万枚うれてたとしても100万円くらいかもしれないし、150万円くらいになるかもしれません。それに配信やカラオケなどもあるので、もっと多い場合もあります。
しかしだいたいこのくらい売れてるな、というところで支払額が1万円とか2万円とかということはちょっと考えられません。

しかし実際にはかなりズレてました。今の例で、120万くらいかなと思ったら、1万2千円だった、という感じです。

では上記の矢印のどこがおかしい可能性があるでしょうか。

可能性1.作家と出版社の契約がちゃんとなされていない

可能性2.出版社にJASRACから支払われていない

可能性3.JASRACに販売元から支払われていない

この3つですね。

(正確には可能性4として、上の例でいうところの「3万枚売れた」という情報が間違っていてじ、あるいは嘘だった、実際には300枚くらいだったという可能性もあります。まあしかしそれはかなり非現実的です)

まず可能性1については自分でチェックできます。実際契約書が手元にあるので、それをみればわかります。僕は実際には出版社とメールなどでもこの件については確認しました。ここは問題ありませんでした。そもそも配信などで売れたぶんと思われるものは入金されていたので(だからこそおかしいことに気づいたわけで)契約自体は当然ちゃんとなされているのは当たり前です。
しかし、ということは2か3に問題があるわけでその可能性がないか、出版社に確認してもらう、という交渉をしました。

次に可能性2ですが、これは正直僕には調べようがないのですが、「絶対にあってはいけないこと」です。JASRACがこれをしていたら、JASRACの存在意義が揺らぐので、まず絶対にありえないと思われます。

ということは、残るは可能性3ということになります。
上記の例でもあげましたが、販売元はJASRACに対して著作権使用料として売れた枚数に対してパーセンテージで支払っています。このときこの「申告」をしなければ、つまりそんなCDは売ってないですよ、ということにすればいいわけです。

さて、一年以上前に可能性に思い至ったので、フィロソフィーのダンスの音源の販売をしている会社に確認をしました。
レーベルはソニーの中にあるのですが、実際にはこの「販売元」となっているのは下請けと思われるサンバフリーという会社でした。これについては僕は理由はわかりませんが、その会社が担当するということになっていました(当然ですが、これはレーベルや事務所などCDをつくっている人が選ぶものであって、僕ら作曲家にその選択権はありません)。
 そしてこの会社に何度か確認したところ、「JASRACに対して、言われた通りの使用料は払っている」とのことでした。なるほど、そうなのかもしれませんが、そもそもその会社が「正しく申告していなければ」この発言にはほとんど意味がありません。
 しかし払っています、と言われたらこちらとしてはそうですか、という他ありません。

 そんな状況がしばらく続きました。その間、念のため関わっている他の作家にもざっくりと確認しましたが、やはり支払われている額は想定されるよりもかなり少ないようです。ということはもう可能性4しかない、ということになるわけですが、もちろんこれもありえませんでした。

 そして今回一年以上がたって何があったのか、理由はしりませんが、やはりこのサンバフリーという会社が、「JASRACに対して申請をしていないCDがいくつかあることがわかった」ということを出版社を通して連絡してきました。

 理由は、ときくと、「忘れていた」とのことです。

 しかしここまで読んでいればわかると思うのですが、少なくともこちら側の視点からすればそれはありません。なぜなら「その可能性はないですか?」ということを一年以上にわたってこちらから確認してもらっていたからです(ちなみにこれはフィロソフィーのダンスの事務所を通して行なっているので、その担当者が実際には確認をしていなかった、という可能性は一応あります。この件については加茂さんに何回か聞きましたが、なぜか質問に対して別のことを答える傾向にあるので、そのことについての具体的な回答が毎回なく、よくわかりません。)

 まあしかし「忘れていた」といっている人に、「そんなわけないでしょう」とそのままいうのもなかなか難しいものがあります。

 さて、この未払いの額はちゃんと支払われるのでしょうか。その会社にキャッシュが残っていなかったら泣き寝入りですね。(本来は売り上げの売れた数のパーセンテージから払うわけで、払えないということは経理的にはありえませんが、別のことに使ってしまっていて実際支払い能力がなくなっているという可能性はあります。)作詞家は、制作した楽曲からの収入は、基本的には印税しかないので、かなりタダ働きをすることになります。(繰り返しになりますが配信などからは支払われています)

 さらに最も大きな問題は、この件については僕ら作家が指摘しなければ完全に「スルー」されていたということです。しかも指摘していたにも関わらず暫くの間「そんな事実はない」という返答をしていて、今になって「忘れていた」というのはありえるでしょうか。またこの点指摘したことに対して、それぞれから特に謝罪などももちろん受けていません。

 あとは、まともな対応と発言が返ってくることを祈りたいと思います。


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2020年9月14日、追記します。

当該企業(サンバフリー)よりお詫びの連絡をいただきました。また状況についての説明ももらいました。

まず事態の処理状況として

「流通分の未申請タイトルも申請済み、使用料も間違いなく処理させていただきます。」

とのことですので、この点に関してはあとは処理の進行を待つことにします。

また、このようなことがおこった理由については「ミスであり、社内での確認がとれていなかったこと」ということで概ね説明をもらいました。(別アーティストの情報にも触れる可能性があるため説明がしづらいのですが、一応そのようなミスがおこる理由については最低限は納得できるものではありました)。意図的に支払いをしていなかったということではないとのことです。

なぜ1年以上確認に時間がかかったのか、という点についてはわかりません。サンバフリー側に意図的にそうした部分がないとすれば(少なくとも連絡いただいた内容としてはそういうことになります)、単に僕からのこの件についての確認事項を運営サイドがサンバフリー側にきちんと伝えていなかった、ということになると思います。

事実として、指摘しなければ支払われずに終わった可能性も大いにあるので、同じような事態が起こっている可能性のある方は注意してみてください。

以上です。



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作詞家です。作曲、アレンジなども結構します。音楽プロデューサでもあります。#ロゴススタジオ で作詞について書いてます。「#音楽ミステリー小説」も書きはじめました。よろしくお願いします。 ご連絡は info.apriorimusic@gmail.com にお願いします。

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コメント (1)
恐ろしい話だなと思いました。ジャンルは違いますがフリーの下請けみたいなことをしてた時期がありますが、先方を信じるしかない状況は多々ありますし、今回の話はかなり立ち悪いなって思いました。
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